祈りとあの日のきらめく空と

初めての出産と、18トリソミーと診断された我が子あゆむのこと。           あゆむは2019.1.24にこの世に生まれ、そしてお空に帰っていきました。     地上で生きる天使ママの日記。

狐につままれる 『悪女について』(有吉佐和子/新潮文庫)

こんばんは、ナユリゼです。

 

とある読書会に行ってみたいなあ、

と思いつつ、状況的になかなか行けないので

「課題図書」だけでも読もうかな、と思い立つ。

骨太な本が課題になっていることが多いようなのですが、

今月は比較的読みやすそうだし、

しかも前から読んでみたかった一冊だったのです。

 

『悪女について』(有吉佐和子/新潮文庫

 

「悪女」というタイトルが指していると思われる一人の女性について

彼女となんらかの関わりのある27人もの人物(老若男女)が語る、という内容。

つまり、章ごとに語り手が変わり、27章まであります。

けれど、語られているその女性自身による語りはひとつもありません。

 

同じ人物でも、人によって評価や印象が違うのは当然のことですが、

それにしても読んでいる最中に非常に不穏な気持ちになりました。

不穏というか混乱というか呆然というか。

読み終わったときはもうほんとに

狐につままれたような心持ちに。

 

彼女は息子を二人産んでいるのですが、

その子たちは二人とも俺の子だ、と言っている人が2人もいますし、

どちらかが自分の子だと思っている人も何人かいます。

彼女とは何年も付き合っているという人も何人かいます。

かと思えば、

彼女は子供どころか男と付き合ったこともない、と思っている人も。

 

人間関係についてだけでも

別々の語り手がそれぞれ思っていることを章ごとに読まされるので

だんだん何をどう考えたらいいのかが分からなくなってきます。

 

結局彼女は聖女だったのか、とんでもない性悪女なのか

本当のところは分からずじまい。

 

でも、人というものはそういうものなのかもしれない。

この本の彼女は極端な例ですけど、

人間だれだって、すてきなところと醜いところを持ってるし、

どの部分をすてき醜いと感じるのかは人によって違いますしね。

人間という存在の奥深さや

人間関係の混沌とした複雑さを垣間見た思いでした。

いやはや。

いやはや、としか言いようがない読後感。

 

悪女ってなんだろう。

彼女が本当に「悪女」であったかどうかは永久に分からないのですが、

どうせ悪女と言われるのであれば

このくらい特大なスケールで美学を持ってやってるのは

いっそすがすがしいなあ。

彼女が何をどう感じていたのかも、

すべてが計算なのかどうかも

分からない。

分からないけど、少なくともこの本読む限りでは

彼女は全く悪びれるところがないし迷いもいっさいない。

常に柔らかく美しく華やかです。

 

狐につままれたままだけど、面白い本を読んだな、と思います。

こういう彼女はとにかく自分とは全然関係のないところで

ちょっとあこがれるくらいの位置から眺めているのが一番だ。

 

たとえば、わたしのあゆむが大人になったとして

こういう女性にひっかかって

狐につままれたような状態になるのは御免こうむりたいわ。

 

そう思っちゃうってことは

やっぱり彼女はまぎれもなく「悪女」なんだろうなあ。

(悪女じゃなくても母は息子の彼女に何かしら思うところはあるのかもしれないですけども。(;^_^A)

色んな本を読んで、人間について勉強しよう!(笑)

 

 

みなさんの宝物が守られますように。

 

 

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