祈りとあの日のきらめく空と

初めての出産と、18トリソミーと診断された我が子あゆむのこと。           あゆむは2019.1.24にこの世に生まれ、そしてお空に帰っていきました。     地上で生きる天使ママの日記。

大切な、何か優しいもの 『まっくらな中での対話』を読んで

こんばんは、ナユリゼです。

 

こんな本を読みました。

 

『まっくらな中での対話』(茂木健一郎withダイアログ・インザ・ダーク/講談社文庫)

 

まっくらな中での対話 (講談社文庫)
 

 

 

タイトル初見で、心理学的な本なのかな?という印象。

そしてなぜか怖いような印象も持ちました(「ダーク」だから?苦笑)。

読んでみたら全然違いましたが。

 

 

『ダイアログ・インザ・ダーク』

とはドイツで生まれた

 ”ソーシャル・エンターテインメント”

だそうです。

文字通り、

暗闇での対話。

 

みなさんは

「まったくの暗闇」

に一定時間いた経験はあるでしょうか?

わたしはありません。

 

まったくの暗闇、とは

文字通り全く光がなく、

目が慣れてきても何も見えないほどの闇のこと。

それほどの闇には

少なくともわたしは物心ついてからは

遭遇していない気すらします。

すぐに脱出してしまって、

覚えてもいないだけなのでしょうか?

消防法の影響もあるのでしょうか?

 

そんな現代において

まっくらやみを作り出し、

1時間~1時間半の間

アテンドスタッフの導きと

自分たち本来の聴覚・嗅覚・触覚・味覚を使って冒険する!

という興味深いイベント、

それが

「ダイアログ・インザ・ダーク(DID)」。

 

本書は

それを日本にて行おうと努力し、実現し、

開催し続けてもいる

志村季世恵氏と

脳科学者でDIDに魅せられた

茂木健一郎氏の対談、

そしてアテンドスタッフとしての

当時(2011年)の活躍メンバー3人

(いずれも視覚障害者)

も交えた座談会を収録した「対談本」です。

 

本書を読んで感じるのは

「わたしは今までいかに五感を意識せずに生きてきたか」

ということ。

 

そして、そのうちのたったひとつでも意識しただけで

ものすごく世界が変わるであろうということ。

 

「ダイアログ・インザ・ダーク」

の体験者は

まったくの暗闇で過ごすだけなのに

とても癒され、色々なことに気づく、

と言います。

 

でもそれはそうだろう、

と読んでるだけで思えるくらいに

わたしは五感が鈍っているかなという気がしますね。

 

視覚 → 電子的な色々、活字的な色々を見すぎ。しかもコンタクトレンズ

聴覚 → 色々聞いてない

嗅覚 → あちこちから色んな匂いが漂ってくるので極力気にしない。

味覚 → まずくなければまあ良い

触覚 → 触り心地がひどくなければひとまず良い

 

大胆に言い切ってしまえば、

現代日本の、特に都会の人間はほぼ例外なくこんな感じだろうと思います。

(※意識して好ましいように改善してる方は除く)

 

だからこそなのか

ダイアログインザダーク

を体験した方は

とても癒されるそうです。

 

なんかそれだけでも体験してみたくなる。

 

 

この本は対談本なのですが、

なぜか読めば読むほど

心の底にある、とても大切な何かに

あと少しで気づけそうな気がしてくる

もう少しでその大切な何かに触れる気がする、

そんな切ない、もどかしい、幸福のようなものを感じます。

 

これはいったいなんだろう。

とてもふしぎです。

視覚を遮断された彼らならではの文化、

それは気づけないほどの日常のことなのだけれど、

この本の中で知ることで、

あっ、これは何かとても大切なことだ、

でもそれを言語化できない!

でも絶対に大切なのに!

そのもどかしさも愛しい感じ。

 

2か所ほど抜粋してみます。

 

『たとえば、我が家の猫の写真を撮ってAさんに見せたら、「縞模様がきれいな猫だね」と言ってくれたとします。次に同じ写真をBさんに見せたら、「しっぽがまっすぐで長いね」という感想をくれたとする。

人の感想って必ず違うものだから、同じものを見せても、AさんとBさんでは絶対に別の感想を持っているはずなんです。それを僕は知ることができる。

こういうのって、もし僕の目が見えたとしたら、自分の目で見て納得して、それで終わりだと思うんですよ。でも、いろんな人に見せていくことによって、自分の飼っている猫についてもいろんな印象を知ることができる。

自分の撮った写真を10人に見せたら、僕は10人分の目を持っていることになるんです。それが僕にとっての、写真の面白さかな。』

 

 

『見えないことが僕にとっては普通の状態なんです。(中略)

「もともと持っていたものを失う」のは大変なことなんだろうと思います。

たとえば、もし今、僕の手が動かなくなったら、「ああ、ドラムもう叩けないや」ってものすごい嘆き悲しむんだろうと思うんですよ。だけど、もとから手がない人にとっては、たぶん大したことじゃない。

あったものがなくなると、すごく悲しい。

だけど、もとからなければ、ないはないなりに生きていける。

最近、そんなようなことを考えるようになりました。』

 

 

この本を読んでいると

いろんな人がいろんな個性を持っている、

という当たり前のことを、

ごく自然に受け入れることができる気がします。

受け入れるし、受け入れてもらえる。

暗闇には何か、そういう力があるのかもしれません。

 

 

ダイアログ・インザ・ダーク

体験してみたい・・・

 

 

 

 

みなさんの宝物が守られますように。