祈りとあの日のきらめく空と

初めての出産と、18トリソミーと診断された我が子あゆむのこと。           あゆむは2019.1.24にこの世に生まれ、そしてお空に帰っていきました。     地上で生きる天使ママの日記。

寄り添うお別れ『おもかげ復元師』(笹原留似子/ポプラ文庫)

 こんばんは、ナユリゼです。

 

こんな本を読みました。

 

『おもかげ復元師』(笹原留似子/ポプラ文庫)

([さ]7-1)おもかげ復元師 (ポプラ文庫)

([さ]7-1)おもかげ復元師 (ポプラ文庫)

 

 

著者の職業は

「納棺師」。

本書は、著者がその仕事に心とからだの多くを傾ける中で

感じた思い、エピソードを綴ったエッセイです。

 

納棺師という職業は、

一般的にはあまりなじみがないものですが、

映画「おくりびと

でその名を広く知られるようになったと思います。

わたしは映画は見ていませんし、

その原作も読んではいませんが、

それでも納棺師という職業を知ったのは

各メディアのおかげです。

興味も何もなかったひとに

そうやって何かが伝わるのって

とても素晴らしいことだと思います。

 

 

さて、

しかしわたしは

納棺師

という職業が存在することは知ったものの、

詳しいことは何も知りませんでした。

単に

死に化粧などを施して故人の最期、ひいては人生を尊重し

お棺におさめて見送る、

という通り一遍のことしか想像していませんでした。

まあ、それも間違っているわけではないのですが。

 

でも、本書を読んで、

これはなんと尊い、なんと身を削るお仕事か、

と、温かいのに涙があふれそうなのをこらえるような気持になりました。

究極のグリーフケアだと思った。

 

nayurizeblog.hatenablog.com

 

 亡くなった方は必ずしも

穏やかで眠るような、微笑みをたたえた美しいお顔でいるわけではありません。

ましてや事故や自死、災害などによる死は

変わり果てた姿になってしまうこともあります。

そして、

死が訪れてからは時間が経つごとに

見た目だけではない色々な変化が容赦なく進んでいきます。

 

わたしは、

あゆむが亡くなってから痛感したのですけども、

「人間にとって、目に見えたり触れたりする”体”は非常に大切」

です。

 

「魂はもうここ(体)にはないんだから」とか

「死んだら無で、何もなくなるんだ」とか

そういう考え方もあるのかもしれません。

でも、

「魂」も「体」もどっちもあってこその

『その人』。

どっちも同じくらい大切なはず。

 

そして、「面影」は

その人の見た目や感触や思い出や表情など

魂だけではない色々なものから得られるものです。

 

その人が大切であればあるほどに

最期の姿と生前の面影がかけ離れていればいるほどに

心が引き裂かれ、自力で戻すことができなくなってしまいます。

もしくは

頭では理解して

心が拒否し続ける、ということも起こり得ます。

 

きちんと亡くなった人の面影を見つめ、自分の感情と矛盾なく紐づけし、

お別れをしなければならないのです。

そうしなければ、残された人は

いつまでもいつまでも、その人の面影を探し続け、感情を迷わせ、

囚われ続けてしまうのです。

 

タイトルのとおり、

著者はご遺体を復元するための、さまざまな技術を持った

凄腕の納棺師さんです!

どんなに損傷の激しいご遺体ですらも、

笑いじわをたどることで生前の表情にできる限り近づける。

愛する人の変わり果てた姿をどうしても見ることができずにいた人々は、

「おもかげが復元」された姿を見た途端

反射的にその姿にすがって、思い切り泣くことができる。

故人の面影を強く偲び、

きちんとお別れすることができるのです。

 

人の心とは、なんとふしぎなものだろう、

としみじみ思います。

 

わたしはあゆむが亡くなってから

約一週間、病室で「あゆむの遺体」と一緒に過ごしました。

でも誰もあゆむを「遺体」だとは感じていなかったと思います。

(亡くなっていることは嫌というほどわかってますが)

わたしはもちろんですが、

おそらく医療関係者のみなさんすらも。

 

本書の著者にも、作品に出てくるご遺族にも、

わたしはそれと同じようなものを感じました。

 

うちのあゆむは生まれた時からとんでもなく可愛くて

(親バカ?)

しかも火葬のその時までずーっと可愛さが失われなかったんですが

(親バカ?)

それでも一週間も一緒にいれば

最初はぷくぷくだったはずのほっぺや

まあるい頭や

ちっちゃくてもしっかりした手足の指が

徐々に徐々にしぼんでいくのが

嫌でもわかりますし、

ずーっとアイスノンを敷いたお布団に寝ているので

氷のように冷たくなって寒そうで可哀そう・・・

 

ああ、

寂しくてもちゃんとお別れして

この子をお空に帰してあげないといけない、母として。

と少しずつ思うようになったものです。

 

本書を読んでいて、

なんとなくそんなことも思い出したりしました。

どのみちお別れするのであれば、

そんな風にお別れができたわたしはやっぱり幸せだったと思う。

 

この本には愛があふれています。

 

愛する人が死んでしまうことは、とても辛く悲しいことだけど、

それでも死は、誰のもとにも必ずやってくる。

見送り、見送ってもらう繰り返しだ。

人は絶対に死ぬ

それが分かっているのにどうしてこんなに悲しいのか。

それは出会えたから

そして愛したから

そのきらめくような喜び。

 

この本を読んでいると、

そんな優しい生命力のようなものが

感じられてきます。

 

 

みなさんの宝物がいつまでも守られますように。